手ブロ企画用ブログです。
小話をのろのろと書いてます。裏話やIF話も含みます。
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妄想しすぎにもほどがある。
如月雨さん宅・誉さんお借り!
さらさらと流れるようにして走らせていた鉛筆を動かす手をとめ、藍はふ、と顔を上げた。
不機嫌そうに細められた目は、木々の間を睨んでいた。
「………なんやのん。用があるなら隠れてへんででてきぃや」
その言葉にかすかに笑い声があがる。
微かに笑みを浮かべた青年の姿を認め、藍はさらに渋面をつくった。
あまりいい思い出のない相手だ。当然の反応ともいえるが、青年のほうは可笑しそうに笑う。
微かに笑みを浮かべた青年の姿を認め、藍はさらに渋面をつくった。
あまりいい思い出のない相手だ。当然の反応ともいえるが、青年のほうは可笑しそうに笑う。
「なんだ、そんなに嬉しそうな顔すんなって」
「どっかにいったのと違うんか」
「同族の顔、最後に拝んどこうかと思ってなァ」
「どっかにいったのと違うんか」
「同族の顔、最後に拝んどこうかと思ってなァ」
にっ、と笑った青年――誉に対して、藍は興味なさそうにスケッチブックへと視線を戻した。
「さよか。ほな用は済んだやろ。とっとと失せぇ」
「まあまあ。少し話くらいいいだろ?」
「まあまあ。少し話くらいいいだろ?」
すとん、と隣に座りこまれ、藍は一瞬ものすごく嫌そうな顔をしたものの、これ以上の言い合いも面倒だと感じたらしい。
深いため息をつくと、スケッチブックを閉じた。
深いため息をつくと、スケッチブックを閉じた。
「お、聞いてくれる気になったか?」
「……なんやのん、くだらん話やったら縛り上げるで」
「お前、なんで八雲組にいんの?」
「……なんやのん、くだらん話やったら縛り上げるで」
「お前、なんで八雲組にいんの?」
単刀直入に問われたその言葉に、藍は首をかしげた。言葉の真意を測りかねたからだ。
何故そんなことを聞くのか、と口で言わずとも相手には伝わったようで、誉は再度口を開いた。
何故そんなことを聞くのか、と口で言わずとも相手には伝わったようで、誉は再度口を開いた。
「人間嫌いでしかもお前、殺したことあるだろ?――なんで八雲組なんかにいる?」
「………」
「仲間のこともどうでもいいとか思ってるみたいだし、わけわかんねえ」
「せやなぁ……」
「………」
「仲間のこともどうでもいいとか思ってるみたいだし、わけわかんねえ」
「せやなぁ……」
藍は鉛筆を唇にあてて考え込むように沈黙していたが、しばらくしてひとりごちるように言葉をこぼす。
「別に、八雲組やからおるわけやない、なぁ。一人でおるとどうにも不便やし、絵ぇ描きたいっちゅうのもあったし、隠れ蓑にも便利やったから入っただけや。深い意味はあらへん」
『仲間』だとか『友情』だとか、くだらないものではなく、ただたんに『利害』が一致しているから所属しているだけにすぎないのだと。
そう言い切って藍は「だけど」と少しだけ笑って言葉をつづけた。
そう言い切って藍は「だけど」と少しだけ笑って言葉をつづけた。
「せやけど、まぁ・・・悪くはあらへん。馴れ合うつもりはないけどな」
「ふぅん・・・そういうもんか」
「そういうもんや」
「ふぅん・・・そういうもんか」
「そういうもんや」
鉛筆を筆箱に仕舞い込むと、藍は服についた土を払いながらたちあがる。
「人間嫌いなんは、今も変わらん。せやけど、それ以上に俺は絵が好きやからな。――いつかはまた放浪に戻る」
「……変な奴だな、お前」
「よぉいわれるわ。いまさらやな」
「……変な奴だな、お前」
「よぉいわれるわ。いまさらやな」
ふ、っと皮肉気に笑うと踵を返した。
「ほなな。二度とあわへんやろけど。つか、二度とくんな」
「ひでぇ言いぐさ」
「ひでぇ言いぐさ」
藍の言葉に誉は苦笑し、彼もまた木立の中へと姿を消した。
会話などなかったかのように、まるでそこに人がいた気配を残さず、邂逅は人知れず過ぎ去った。
会話などなかったかのように、まるでそこに人がいた気配を残さず、邂逅は人知れず過ぎ去った。
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