手ブロ企画用ブログです。
小話をのろのろと書いてます。裏話やIF話も含みます。
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分かる人にはわかる、終わりとはじまりのお話。
「終わるねぇ」
全てが。闘争と逃走で繰り返されてきた全てが、きっとこれですべて終わる。
早くにリタイアしたからこそ、全てを高みから見物できる。
遠くから、そっと眺めて、終わりを唯この胸に刻む。
「僕らがこの世に存在した意味は、さぁ、何だろうね」
ぶらぶらと足を揺らして、隣を見上げれば、いつも通り、何も感情を見せない顔で、そこをうかがわせない瞳で、友人が静かに立っていた。
その手は腰に飾り紐でくくって下げられた刀の柄にかかってこそいたが、動き出す気配も、その刀を抜こうという意思も、何もなかった。
ただただ、静かに戦いの音を、誰かの声を、そして目に見える闘争の名残を目に写して黙したまま。
何も語ることはない、とそうその姿が語っていた。
彼も、早くにその身を戦いから遠ざけた。何よりも家を愛していたはずの彼が。その理由を、誰にも言うことなく静かに姿を消して。
「からだは、もういいの」
「最期の悪あがきというやつだ。見逃せ」
「…そう」
そっと息をつく。きっと、彼はこの夜が明けたらもういない。
長く患っていたのを知っている。彼の体はもう限界を超えている。
もとより、持病があったのだ。心臓が少しずつ壊れていく病気だと、いつの日だったか、口に出していたのを聞いた。
そうして、死ぬ前に姿を消して。
彼は愛した家の終わりをその目に焼き付けている。
同胞が死んでいくのも、逃げていくのも、立ち向かって命を散らすのも、全てその目に焼き付けて。
そうして、その全てを見届けて、彼は逝くつもりなのだろう。
「逝くんだね」
「あぁ。お前はどうするんだ」
「僕?僕ももう十分かな。やることやったし、やりたいこともなくなったし、結局、最後まで僕にはなれなかった。それがわかっただけで十分だよ」
「そうか」
「うん」
なら、と手を差し出される。
こちらに向けられる顔に静かな笑みを浮かべて。
「お前も来るか」
「…いいの?」
「お前がいいなら私は構わん」
目線でどうするのか、と問われて、少しだけためらってからその手を取る。
手を引かれて立ち上がれば、すぐにその身をひるがえして、彼は歩き出した。
どこへ行くとも、何をするとも言わずにただ、歩く。
それでいい。この旅にきっと終わりはないのだから。
どこかで、生き続けて、どこかで死んで。
そしてまたいつか、新しい命となって、生き続けていく。
「遅れるなよ」
「そっちこそ」
そうして、僕らはずっと生きていく。
ちっぽけな命だけど、きっと、どこかで。
だから、さようならはいわないで。
”また”どこかで。
会いましょう。
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