手ブロ企画用ブログです。
小話をのろのろと書いてます。裏話やIF話も含みます。
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とっても短い、薄暗いお話。
りきゅ。さん宅芍薬さんちょみっと、お借りしました。駄目でしたらどうぞけせやこらぁあああああああああああっと殴り込んでください。
りきゅ。さん宅芍薬さんちょみっと、お借りしました。駄目でしたらどうぞけせやこらぁあああああああああああっと殴り込んでください。
いつからだろう。この瞳に、この心に、薄い膜でも張られたかのように世界がぼやけはじめたのは。
確かにこの目にしかと映っているはずの世界は、どこかガラスのショーケース越しに並べられた絵本のように、フィルター越しの映像のように、不鮮明にしか認識できない。
いつしか凍てついた心は成長することを止めて久しく、幼いままの己が偽りの笑顔を振りまき続けていた。
一体、どれ程の者が気付いているのだろう、この偽りの、ガラス細工の仮面に。
自分自身でさえ、夢現、眠りの中で現実と夢のはざまの記憶の境界ででしか思い出せず、意識あるときには記憶すら欠片も残っていないこの事実を、一体だれが気付けるというのか。
泡沫の夢の中、記憶の波を漂いながら”俺”は取り留めのない思考に微睡む。
結局、どれほど近い距離にいようと、いや、近い距離にいるからこそ、誰も偽りに気付かない。
深い深い傷を心の奥底に沈めて、一切の記憶を粉々に砕いて己すら思い出せないほどにして、そうして成長することを止めてただ無邪気のままでいることを、現実をみることを止めた瞳は、きっと他の者にはただ明るい色しか湛えていないように見えるのだろう。
あぁ、ばかばかしい。
赤い赤い血の海と化した箱庭に、”俺”はずっといるというのに。
そう考えて、でも、と思い直す。そうだ、自分だって目を覚まして現実に帰れば、こんなことを考えていたということすら思い出せやしないのだ。
粉々に砕いたのは、忌々しい記憶だけじゃない。全て、成長していく心の全てをいまでも無意識のうちに砕いて砕いて砕いて、なかったことにしているのだから。
「…あはは」
乾いた笑いがこぼれる。
下らない、本当に下らない。
どうせなら、”俺”を”ボク”を構成する世界のすべてが砕けてしまえばよかったのに。
*
目に刺さる明るい色に、ぼんやりと眠りの海から引きずりあげられる。
ゆっくりと体を起こした枢は、ぼう、っと窓のほうへと顔を向けた。
「…おはよう、しゃくやく」
「おはよう、枢。…あら、酷い顔色……大丈夫?」
こちらをみた芍薬が心配そうに顔を覗き込んでくるのをゆっくりと押しとどめて、枢はふんわりと笑みを浮かべた。
「だいじょうぶ、だよぉ。えへへぇ」
さぁ、今日も偽りの自分を生きようか。
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