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手ブロ企画用ブログです。 小話をのろのろと書いてます。裏話やIF話も含みます。
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過去ログその2.こちらはNWログでうちの子だけでてるお話を選んで再UPです.


1.グローリア過去話



怖い怖い怖い怖い怖い

後ろから迫ってくる足音に、ただただ恐怖しながら逃げ続ける。
恐怖に飲まれないでいられる命綱は、しっかりと握られた確かな手だけ。

「っ・・・ダリア、大丈夫か・・・っ?」
「だいじょう、ぶ・・・っ」

きれぎれになりそうになる言葉を必死で紡いで、止まりそうになる足を叱咤する。
止まっては駄目、捕まる、あいつらに。
まだ歳若いグローリアたちではどうしようもないほど、熟練したハンターたちに追いかけられているのだから。
だけど、いつまで逃げ続ければいいのだろう?
そう後ろ向きにしか考えがいかなくなるほどの時間を逃げ回っていた。
もうここがどこだかもわからない。
ただ駆けて駆けて駆けて。時折物陰に身を潜めてやり過ごしながら逃げ回り続けて。
森のあたりまででれればいいのだが、方向感覚さえすでに狂っている。
それはきっと、前を走るセルジュも感じていたのだろう。
何か考え合ってのことだろうか、目の前の廃墟らしきものの中へと滑り込み、奥へと入り込む。
手は握られたままだったため、当然グローリアもその後ろをついて走る。

「は、はぁ・・・・セル、ジュ?どうしたの・・・?」
「・・・このままじゃ、二人とも捕まる。・・・・ごめん、ダリア。ごめん」

ぐ…っと唇を噛んで、それから少しだけ笑うような吐息をこぼしたセルジュに。
――嫌な予感が、した。

「・・・セルジュ?」
「大丈夫、きっとダリアの家族はきてくれる。コルヴィーノの人は強いから、ダリアは助かる」
「待って、何を言ってるの?駄目よ、セルジュ…!」
「グローリア。グローリア・ダリア・コルヴィーノ」

びくん、と身体が跳ねる。
セルジュがグローリアのことをフルネームで呼ぶとき。
それは――彼が曲げられない思いを口にするとき。

「大好きだよ。愛してる。それは一生、ずっと、変わらない。変えられない。だから――ダリア。君のことを守らせて?」
「っ・・・・!」
「愛する人を守れないなんて――そんな不名誉な死に方は、したくない。これは、男としての矜持だ」

卑怯だと思った。
そんなことを言われて、嫌だなんて言えるわけない。
泣きそうになって俯いたら、そ、っと頬に手を当てられた。

「大丈夫、なるべく『片付ける』から。――それと約束して。何があっても、何を見ても、絶対声をあげないで。絶対ハンターにみつかるようなことをしないで」
「・・・・やくそく、するわ。あなたのために」
「いい子。――愛してるよ、ダリア」





そういって見せた笑顔はいつも通りの笑顔で。











「―――――!!!!」

鋭く細い悲鳴をあげてグローリアは飛び起きた。
ぎゅう、と布団を握り締めて周りを見渡し、いまいる場所が私室だというのがわかると、深く息を吐いた。

「ゆ、め・・・・・・」

自身の身体をかき抱くようにして背を丸めて零れそうになる涙を堪える。
幾ら時間がたとうとも依然として癒える気配のない傷は、未だに血を流している。
それはグローリアの心を凍てつかせるのには十分すぎた。

「…セルジュ…」

大切そうに吐息にのせてこぼされた言葉は、悲しみの色に染まっていた。
グローリアは暫く小さく震えていたが、身体の震えが治まるとするりとベッドから音もなく降りると、壁に立てかけてあった鎌を手にした。

「……時間、まだ大丈夫そうね」

ちら、と視界におさめた時計の針が深夜を回ってすぐなのを確認すると、屋敷から猫のように抜け出した。
どこに行くかなんて定まっていない。だが大人しくしていると悪い夢をまたみてしまいそうだったから。
ずり、と鎌を引きずってあてどもなく歩き出した。














2.セシル過去話






彼と知り合ったのは、私が生まれてから50年の月日がたとうかという頃だった。
食事のために街へ繰り出し、上手いこと人間を引っ掛けて裏路地へと誘導して、さぁ食事にありつこうとしたとき。
僅かに鼻についた血の香に、何故か酷く意識を持っていかれた。
目の前にいる人間のものではない血の匂い。
気にならないわけは、なかった。









「っ……!いってぇ…」

僅かな油断だった。
その隙を突かれて逃げられたのはまだいいとして、大怪我までしているのではハンターとして失格だ。
命があるだけ儲けもの、といわれればそれまでだが、こちらにもプライドというものがある。

「~~!次あったら、逃がすかよ……!!」
「物騒だな。へぇ、ハンターかお前」
「!!??」

横からいきなり聞こえた声に、ばっと振り向くと、女がいた。
意外すぎる声の主にぽかんとしていると、興味津々な顔でこちらをみていた女は酷く不機嫌そうな顔になる。

「お前、今失礼なこと考えただろう。例えば、私のこと女だとか」
「え?」
「殺すぞ。私は男だ」

胸なんぞないわ、ボケが。よくみろお前の目はガラス球か?
そういうと彼女―――訂正、彼は、俺が手にしていた銃に手を伸ばしてきた。
流石にそれには慌てた。

「ちょ、まてっ!素人が銃に触ろうとすんなよ!!」
「素人じゃない。……それ、放置しておくと爆発するが、いいのか?」
「え?」

驚いて彼から気がそれた瞬間を狙い、俺の手から銃を奪いとると、弾装の部分を弄り始める。

「悪いな、みてたんだ。お前最後の弾が不発だったのに気付いていたか?」
「……いや」
「だろうな。弾詰まりを起こしてる。次撃とうとしたら、腕ごと吹っ飛ぶところだったぞ」
「うげ」

専用の道具がないからこの程度、と言って投げ返される。

「一応、詰まった弾は取り除いたが、中で傷がいってるとも限らん。自分で解体できないなら専門家に見てもらえ」
「お、おう…ありがと、って、ちがああああああああああう!!」
「あ?」
「お前、何普通に俺に話しかけてんだしっ!さっきの口ぶりからしてお前、吸血鬼だろ!?」

危うく相手のペースに巻き込まれるところだった。
相手は、狩るべき吸血鬼だ。
明らかに警戒態勢をとった俺を見て、彼ははぁ、と溜め息をついてにやりと口の端を持ち上げた。

「お前、私に勝てるとでも?そんな傷を負って、肝心の銃も使い物にならない状況で」
「つかえねぇ訳じゃねぇだろ。てめぇ一人、一発放てりゃじゅうぶ……っ!!」

言いかけた口に、がっ!と荒々しく手が突っ込まれる。
ぎり…と舌に爪が食い込み、今にも引きちぎられそうになる。

「人間如きがほざくなよ。というか、お前ら本当に頭固いな。せっかく逃がしてやろうっていっているのだから大人しく逃げればいいものを」
「――っ!!」
「それにさっきの吸血鬼、私の家の奴じゃないしな。正直なところ関係ない。むしろ同じカテゴリに放り込まれるのは心外だ」

ぎりぎりと爪が舌に食い込んでいく。
爪を鋭く研いでいるのだろう。口の中が血の味でうめつくされる。

「ぐっ……!」
「ああ、無理に喋ろうとするなよ?千切れるぞ。殺すつもりはないからな。死んだ人間の血は冷めてまずいし」

さらりとえぐいこと言うなし!と叫びたいのはやまやまだが、舌に食い込んだ爪のせいでまともに喋ることは叶わない。

「……お前」
「?」
「もしかして、あれか。ええとなんて言うんだったか……。あぁ、そうだ、ツッコミ体質?」
「むぐっ」

なんだしそれ!と、思ってあれ俺ってツッコミ体質なんか!?とちょっと落ち込む。

「うん、面白い。あぁあと、しつこいようだが、私をコルヴィーノの乱暴者と同じにするなよ。物凄く不愉快だ。勢い余ってお前を殺しちゃうかも知れないくらい不愉快だ」
「もががが」
「はは、何言ってるかさっぱりわからん。まぁ、殺意はなくなったようだからよしとしてやろう」

とっても爽やかに笑う吸血鬼に、すこしいらっとしたが、どうやらこちらを攻撃する意志はないようだ、ということだけはわかった。
する、と口に突っ込まれていた手を抜かれ、げほげほと咳き込んでいる間に、彼はさっさと立ち上がって手を拭いていた。

「本当、お前らって愚か者の集まりだな。まぁ、私には関係ないから別にいいが」
「愚か、者って・・・。げほっ、何がだよ」
「愚かだろ。殺し殺され、連鎖は続くもんだって、なんでわからんかね」

大体、お前ら人間も人間同士で殺し合いしてるじゃないか。
そう言って、吸血鬼は心底蔑んだ目で冷たく見下ろしてきた。

「私はお前らが嫌いではないが、侮蔑に値する。極力関わりたくないから、人間を殺したこともない。いっしょくたにするな、あんな血狂いのやつらと」

――――やっと、わかった。
彼は怒っているのだ。先ほどの吸血鬼と同類に扱われていることに。
理解した途端、すとん、と何かが収まった気がした。

「悪かったよ。一緒にしねぇから、機嫌直せ男女」
「・・・・・・・・・・・・・・殺すぞ人間風情が」
「はっはー。さてはお前女顔なの気にしてるな?」
「よし、OK、そんなに殺されたいとは知らなかった。安心しろ、すぐに殺してやるから」

にっこりと笑って手にした刀に彼が手を伸ばしかけたところで、遠くのほうから仲間の声が聞こえた。
それを同じく聞き取ったらしい青年は、ちっ、と舌打ちをしてさっと身を翻す。

「お前、次会ったらぶっとばす。覚悟しておけ」













3.セシル小話




ギリギリギリギリギリギリ

音を立てて、心臓がきしむ。
ひゅーひゅーと喉からもれる音が、耳障りで仕方ない。
ぐっ、と心臓のあたりを握り締め、ただその痛みに耐える。

「っは……!!」

ドクン、と大きく心臓が脈打ち、それさえも激痛となり体中を駆け巡る。
崩れ落ちそうな体を叱咤し、切れそうな意識の糸を必死に手繰り寄せる。

「っ、か、はっ…!ぐ、うぁ……!!」

どんっ、と乱暴に壁に身体を寄りかからせ、少しでも楽な体勢を取る。
暫くすると、すこしづつ痛みがひいて楽になっていった。

「はっ、は……はぁ……」

張り詰めていた神経が緩んだせいか、かくりと膝が崩れ落ち、そのままずるずるとへたり込んでしまう。
そのまま壁に寄りかかって、ぼんやりと窓の外を見遣る。
先ほどみたより外が暗い。
そう思って、部屋にかかる時計に視線を移し、自分が感じていたより遥かに長い時間が経っていたことに驚いた。

(まずいな……だんだん薬が効く時間が減ってる……)

なかなか整わぬ息を必死で平素どおりに戻そうと深呼吸を繰り返しながら、きり…と唇をかむ。
220歳を越えたあたりからだろう、すこしづつ心臓の調子が悪くなっていった。
最初は、歳のせいだろうかとも思ったが、母や父はもう少し長寿だったな、と考えそれから父の病気を思い出した。
父は晩年、原因不明の心臓病を抱えていた。
執事の仕事をこなすため、なんとか薬でぎりぎりまで発作を押さえ込み、薬がほとんど効かなくなってからも母が止めるまで、ずっと皆に病気のことを隠して仕事を続けていた。
まさか、と思って父の知り合いのツテで家族には秘密で調べたところ、初期症状もそのあとの経過も父と同じだと、おそらくは同じ病気だろうといわれた。
だが、そのあとに、もう一つ言われたことが、あった。

『彼より、進行が早いですね……。もしかしたら、もうあまり生きられないかもしれませんよ』

父の病気は50年近くかけゆっくりと彼の身体を蝕んでいった。
だけれど私の場合は、数年で一気に病気が進行しているようだ、と。
それに「そうですか」とだけしかいえなかった。

(まだ、倒れるわけにはいかない)

そのときから薬を服用し、病気の進行と発作を抑えながら仕事をするようになった。
さすがに同じ執事で親交のあるシェンには「無理はしないように」という言葉をもらってしまったが(何も言ってないにも拘らず、だ)、今のところ仕事中には倒れるようなことにはなっていない。
己のプライドをかけて、倒れるようなことがあっては、いけない。
それでも、薬の服用回数が多くなってきたのも、事実で。
少しずつ、薬が効く時間が減り、発作の回数も増えた。
いづれは、父と同じように薬がまったく効かなくなるのだろう。

(そうなったとき、私はどうするだろうか)

はぁ、とようやっと整った息を少しだけ吐き出して、そう問いかける。

(家を出るだろうか。それとも、自ら死を選ぶだろうか)

惨めな姿をさらすくらいなら、きっと私は死を選ぶ。
誰にも病気を悟られないうちに、姿を消して。どことも知れぬ場所で自害をするだろう。
それが、家族を哀しませることだろうと。

(だが、まだ私にはやらないといけないことがある)

そう自戒する。まだ、死ぬわけにはいかないのだ。
やるべきこと、やりたいこと。死を考えるのはそれら全てを終えてからでいい。
それらを終えたとき、きっともう生きてる意味はなくなるだろうから。

(今はただ、生きることを。やるべきことのみを、考えればいい)

だから、今は無理をしないで、すこしだけ休もう。







いずれは、誰にも等しく訪れる終わりを、少しだけ近くに感じながら。









4.エルダ過去話







幼い頃に家の物置でみつけた古い古い一冊の手帳。
薄汚れてこそいたけれど、大切に保管されていたらしく、虫食いもなくそこに書いてあることは読み取れる、はずだった。
――そこに書かれた文字が、今はほとんど使われなくなった古い字体でなければ。
僅かにあった知識を総動員して読み取れたのは、「誰か」にあてた手紙のようなものであること、そしてこれを書いた人の名。

『Joshua=Keats=Lourie』

聞いたことも、見たことも無い人の名前。
ロウリエ家の系譜にこんな人はいただろうか?
幼い子供心がくすぐられたのは、事実。
それからひたすらに古い字体のことを勉強して、すこしづつ長い長い文を読み解いていって。
15歳になろうかという頃、ようやっと全て読み解き終わった。
その頃にはその『手紙』の内容を理解するだけの知識も身についていた。
正直に言おう。愕然とした。
今まで御伽噺だとずっと思っていたものが、目の前に突きつけられたときのような衝撃を受けたのだ。
それは、本当に『手紙』だった。
ただ一人にだけあてられた、哀しい哀しい手紙。
優しさと悲しみと苦悩と――――懺悔と。
流麗な字でつづられたそれは、ただひたすらに無情な現実を突きつけるもので。
何故、これが家の倉庫にあったのか。
家族に問いただして、ようやっとわかったこと。

『昔――100年ちょっと前くらいかなぁ?匿名で送られてきたらしいよ。――うん?詳しいことは俺も知らないんだよなぁ……まぁ系譜にこそ名はないけれど、確かに”ヨシュア”っていう名の人はうちのご先祖様だよ』

それから、「系譜に名前がないのは、確か――」と、内緒話をするように声を潜めて、続けた。

『確か、Night・・・なんたらとかいう組織に入ったからだってお爺様にきいたことがある。エルダにとってひいおじいちゃんだね。――へ?そのNightなんとやらに入るにはどうしたらいいって?さ、さぁ……ってちょっと待ってエルダ。その組織に入るつもりかい?!』

もうそのときには決心していた。
この「手紙」を届けないといけない、と。そのためには手段を選ぶつもりはなかった。
きっとその組織に入ったら、系譜から名が消え、二度と両親を会えなくなるのかもしれない、とそんな予感はしていたけれど、それでもこの思いをとめることは出来なかった。
哀しい物語を、この手で止めないといけない。
泣き続けてる「誰か」がいるのなら、その人に伝えないといけない。
『笑っていて欲しい』のだと。







『――気をつけていっておいで。一度きめたことだ、ちゃんとその目的をはたしておいで』

両親は、理解を示してくれた。
二度と会えないのだと言ったら、大丈夫、と笑ってくれた。
名前を変えなければ、街の人たちのうわさがきっと聞こえてくるから、って。
それだけで十分だから、って。
ただ、前を向いて歩きなさい、と。
誰にも恥じることのない、胸を張ることのできる人生を自分でつくりなさい、と。
そう言って笑って見送ってくれた。
当然、笑顔で別れた。
だって、最後が泣き顔なんてみっともないでしょう?
笑って笑って。最高の笑顔を両親へむけて。笑顔が彼らの記憶に残るように。

『行ってきます!!』




そして、ハンターとなった。
最初は戸惑いが多かったけれど、今ではそつなく仕事をこなせる程度にはなった。
元々運動神経がよかったのもプラスに働いたのだろう。
Night Wisperは、巨大な地下組織だった。
その中で生活し始めてすぐに、ここで生活しているものの半数以上は、なんらかの傷を負っていることがわかった。
大小様々であれど、吸血鬼や人狼といった類に、あまりいい感情をもっていない者が大半だった。
理解は、できた。
ハンターとして仕事で出会うモノたちは、こちらをエサとしか思ってなかったり、はたまた遊び道具と思っていたりと散々だったりしたから。
それでも、絶対悪ではないような気がした。
出会う吸血鬼のなかで、数少ないながら話の通じる者もいたにはいたのだ。

『んー、なんで人間襲うのっていわれてもなー。お腹減るからとしか。ほら、ボクら血を吸わないと死んじゃうからねー。……吸わないでいいなら、吸わないよ。人間ってめんどーだし。あーでも、キミみたいな子は嫌いじゃーないよ♪――え?人間殺すやつら?知らないよ。それはそいつらに聞いてよね。少なくともボクは必要じゃなきゃ人間なんて殺す価値すらないと思ってるけど。ハンターは何人か殺しちゃったことあるけど、大概は気絶させて放置かなぁ?なんでそんなこと聞くのさ?変な子だねぇ』

少年のような見た目のわりに年寄りなのだと自分で言ってのけたその吸血鬼は、ただ苦笑するだけだった。
近くにこそ寄ってきはしなかったけれど、逃げも攻撃もしないでこちらの話に耳を傾けてくれたのだ。

『まぁ、キミみたいな子がたまーにいるからね。元々ボクは人間は嫌いじゃないし。好きでもないけどさ。ボクにとったら、邪魔なら同族さえ殺してしまうキミらのほうがよほど悪だとは思うけど?』

確かに、そうかもしれないと、内心思った。
彼らのいうことは、彼らの立場からすればきちんと筋の通った理屈を口にする。
それは時折、人の醜い部分を容赦なくえぐることが多いけれど、それでも一概に間違っていると否定することは出来ないことを言うのだ。
だけれど、賛同はできない。
人間だから、彼らよりはるかに弱い生き物だから。
生き残るには、知らなければならない。
身を守る術を、敵のことを、全て。全て。
理解して、それでもやはり納得などはしない。
嫌いじゃない。人狼も吸血鬼も。
それでも、仲良くとはいかない現実を知っていたから。




「…現実と理想はかけ離れてるものだよ、ね。うん。大丈夫、大丈夫」

ぎゅ、と拳を握り締めて、前を見据える。

「あたしには、やりとげたいものがあるんだ。それを成すまではあんたらに殺されるわけにはいかないんだよ」

未だにまみえることのできない「探し人」。
それでも、いつか必ず会えるのだと信じて、戦い続ける。

「待ってなよ、必ず捕まえるんだから」

誰にも言えない目的だけれど、それでも必ず成し遂げれるように。
強くなくたっていい。必要ならば、この手を真っ赤に染めることさえ厭わない。
ただ、生き残るのだ。目的を果たすまでは。









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本職は一応字書きです。
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