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手ブロ企画用ブログです。 小話をのろのろと書いてます。裏話やIF話も含みます。
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ただの未来捏造小話。枢と紫水しかいない。

ちょこっとあけしゃん宅白菊様のお名前お借り!


 

 
 
それは果たして 必定であったのかどうか
いまとなってはわからないけれど 無駄ではなかったと知っている。
 
 
 
 
 
「しっかし、まぁ…でかくなったよなぁ」
「何が」
「せっこのこった。ちぃちゃかったろう」
 
なんだ、そのこと。
そう呟いて、枢はゆるりと口元をゆるませた。
紫水と大して変わらぬ――もしかしたら多少、枢のほうが背が高いかもしれない身長は、ここ数年で一気に伸びた結果だった。
 
「成長期がきた、って考えれば妥当だとおもうけどね。オレももう20歳だよ?」
「しってらぁな。可愛げがなくなっちまって、もったいない」
「むしろオレは過去の自分を抹消したいけどね」
「なんでさ」
「馬鹿すぎる」
 
にぃ、と笑みの形に口元を歪ませたまま吐き捨てた言葉は、絶対零度の響きを持って地に落ちる。
枢にとって、数年前の自分は黒歴史認定がなされているようだ。
無理からぬことか、と昔の枢の自由奔放ぶりを思い出して紫水は苦笑をにじませた。
 
「悪かなかったと思うがなぁ」
「当時はね。育ってみれば、いかに自分が世間知らずかつ馬鹿でアホでまぬけだったかというのが如実にわかっていたたまれなくなる」
「そういうもの?」
「オレの場合が特殊なのかもしれないけど。精神発達が遅かったのは認める」
「あぁ、それは確かに。ここ数年で一気に大人になっちゃって…」
 
なにがあったのか、そう視線で問うてくる紫水を横目でちらと見やって、クツリ、と喉の奥で笑う。
 
「何もないさ。ただ、そうだな。子どもでいるには些か、及ばぬことがあっただけの話だよ」
「ふぅむ?」
 
かし、と手にした煙管をかんで、意味ありげな呟きを落とした紫水は、しかしそれ以上を問いかけてはこなかった。
いくら問いかけても、口を割ることはしないだろうと思ったのか、それとも単に興味が失せたのか、それは定かではなかったが、枢にとっては好都合だった。
元よりこれ以上を望まれても口を割る気などありはしないのだから。
こういうとき、紫水はとても都合よく口をつぐんでくれる。それは空気を読んでのことかもしれないし、もとよりさして他人に興味がないだけかもしれないが、なんにせよありがたいことこの上ない。
 
「昔も今も変わらないのは、オレは相変わらず白の国が大好きだってことくらいだよ」
「ふぅん。ああ、そうか、白の女王を敬愛してるんだったか」
「まぁね。白菊様だけじゃないよ、白の国の住人のほとんどをオレは大切に思ってる」
 
オレの唯一の居場所、こんなオレでもいていい場所。
だからこそ、この命をかけてでも守りたい場所。
 
「俺は、歩兵で、弱いよ。だけど守りたい気持ちはだれにも負けない」
「その信念…いいや、執着か。素晴らしいと思うよ」
 
なんせ、俺には無理だからね。
そういって公爵夫人は声無く笑う。彼はどこにもつかない。誰にもこびない。そして、誰とも相いれない。そういう存在だ。
 
「白の坊や。そろそろ戻らないと、まずいよ。あんまし外にいるのはよくない」
「あぁ、もうそんなに時間経ったの?今日もお茶をごちそうさま。おいしかった」
「そりゃどうも。またおいで。私はいつでもここにいる。相談を聞くだけならいくらでも」
 
ふんわりと笑った紫水に見送られ、枢は森の中を歩き出した。
 
 
幼い自分を否定はしない。否定したところで意味がない。成長するには必要だったことだ。
無駄なことなんて、ひとつもないのだと、教えてくれた人がいた。
その言葉を胸に抱いて、今日もオレは生きている。
 
 

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