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手ブロ企画用ブログです。 小話をのろのろと書いてます。裏話やIF話も含みます。
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昔の小説のログですね。扱いとしては。

その1.ヴァイオラと雷麗。




帝国と古来からいた先住民たちとの争いが終結しておよそ半年。
これはそんなとき私が友人と交わした会話。




何故戦いが始まったのか。
そんなものに私は興味がなかったけれど。
友人である雷麗にとっては重大な問題だったらしい。



「まったく……嫌な空気だねぇ……」
「そうね。ストレンジにとっては、あまり嬉しくない雰囲気だわ」

人気のない丘の上で二人、街を見下ろしながらそうぼやく。

「こういうのは、好きじゃない。あたしは、人間が好きだから余計に、ね」
「私はどうでもいいわ。今までどおり生きるだけ。大して変わらない。あなただってそうでしょう?雷麗」
「そうさね。でもそれとこれは別ものさ。帝国側はあたしらストレンジや先住民(バトライヤー)たちを奴隷扱いする。それが気に入らない」

静かな瞳で街を見下ろす雷麗は、いつもよりすこし感情的になっているように感じた。
それを横目で伺い、それから彼女と同じように街に視線をおとす。

「じゃあ、雷麗。何故あなたはまだ帝国にいるの?ここ以外にも居場所はあるわ」
「……結局、あたしはここが好きなのさ。あんたは世界に興味がないから。あたしはここが好きだから。ふふ、変人同士、ってか」
「あら、変人だなんて失礼ね。仕方ないでしょう。私たちの種族は特に奴隷としての価値が高いから、買われて売られての繰り返しなんだもの。そりゃ擦れたくなるわ」
「まだ一度も売られたことないくせに、よく言うよ」
「時間の問題よ。もうすでに目をつけられてるもの」

ふぅ、と溜め息をつくと、雷麗がこちらに視線を向けたのがわかった。
心配そうな目をしてる雷麗に、私はふふ、と笑ってみせた。

「大丈夫よ。もう覚悟はきめてたもの。大丈夫」
「だけど……」
「いいの。私たち夢魔は人の精気を喰らわないと生きていけない。持ちつ持たれつ。買われるのはイコールで食べ物に事欠かないということよ」

そう、前からわかっていた。
いつかは、こうなるんだ、と。

「あんたはすごいねぇ。痛い目にあうかも知れないだろう?」
「あら、そうなったら雷麗が助けてくれるんでしょう?」

イタズラに微笑めば、生意気言うんじゃないって小突かれた。
本気でいったんだけど、って言ったら、呆れたように溜め息をつかれてしまった。

「たまにヴェラの言うことは突拍子がないねぇ。まったくこの子は……」
「やぁね。お母さんみたいなこといわないでよ。いいじゃない、甘えたがりなの、私」
「自分で言うんじゃないよ!まったく……」

苦笑いをして、また街に目を向ける雷麗。
私もまた街に目を向け、静かに呟く。

「ね、雷麗」
「ん?」
「いつか、いつかよ?私が帝国に反旗を翻すときがきたら、あなたはどうする?」
「何も」

あっさりと言葉を返され、私はびっくりして雷麗に目をやる。
雷麗はいつの間にかこちらを見据えていて、静かに静かに言葉を紡ぐ。

「あんたが何をしようが、誰を殺そうが、誰に恋しようがあたしは何にもしないよ。けどね」

そこでいったん言葉をきって、一度瞑目して、それからまた続けた。

「だけど、あんたがもし、何の罪もない人間を殺そうって言うなら、話は別だ。そんときゃ、あたしはあんたを殺すよ」
「雷麗……」
「あたしはあんたを大事な友人だと思ってる。だから、あたしに殺されるようなことはしないでおくれよ」

思わず、涙が出そうになる。
雷麗の言葉に、その言葉の裏に隠された思いに。
それらをかみ締めて、私は雷麗に思い切り抱きついた。
驚いたようだったけれど、ふらつくことなく受け止めて抱きしめ返してくれる優しい友人に感謝しながら、そのままの状態で思いを告げておく。
いまのうち、少しでもこの友人に伝えておきたいことがいっぱいあるのだ。

「ごめんね。ごめん。私、もしかしたらあなたに殺されるようなこと、しちゃうかもしれない。私は人が憎い。母を、父を飼い殺しした帝国の人間が憎いの……!!ただ使うだけ使って、食べ物をあたえないで殺したあいつらが!」
「ヴェラ、あんた……」
「雷麗、あなたに言ったわね。私たちは夢魔、人に快楽を与えるモノ。でもね、それ以外にも私たちは闇を司るモノ。昔から奴隷として使われいているのが私たち夢魔の現状なのよ……!私の両親だけじゃない!私の仲間がたくさんたくさん、帝国に殺されてるの!!飼われて殺されて、減ってきたら野放しにして増やしてまた捕まえて飼い殺す。あいつらのやってることは正しいの?いいえ、私は許さない。許すものか!私は……!!」
「ヴァイオラ!もういい!もういいから……!」

ぐ、と力をいれて抱きしめられる。
わかってる、こんなことを言ってはいけないのだと。きっと優しい友人は己のことのように傷つくのだと、わかっていて言葉が止まらないのだ。

「わかったよ、ヴェラ。あんたの気持ちはわかった。そうだったね、失念してたよ……。ごめんよ」

優しい優しい言葉が、耳に滑り込む。
だから、私は甘えてしまう。この優しい友人に。縋り付いて、泣くだけ泣いて、そして突き放さないといけない。
それをきっとこの友人は理解している。

「いいかい。あたしはアンタと違って、母を殺されても父を殺されても、たぶん憎しみという感情を人間に向けることはできやしない。だから、アンタのその気持ちを理解してやることはできない。でもね、これだけは覚えておきな」
「……?」
「あたしはね、あんたを本当に大切に思ってる。だから、もし、その怒りがどうしようもなくなって、全てを殺したくなったら、そのときはあたしのところにおいで。……楽にしてあげるから」

ああ、もう、本当にこの人は―――――。

「……ありがとう……。ありが、と…っ…!」

涙が溢れてとまらない。
そんな私の頭をゆっくりと撫でて、そっと抱きしめてくれる友人に身を預けて、私はただ泣きじゃくった。
どうか、この優しい友人が私を殺すようなことにならないで欲しいと願いながら、心の隅のどこかで殺されたいとも願う私は、もう壊れてるのかもしれない。
ただ、いまだけは、友の腕に身を預けて偽りの安らぎを感じていたいから。
私は思考することを、やめた。

























それから、約7年と少し。
私と雷麗は決定的に立場を対立させた。
雷麗は帝国軍に。
私は反帝国のテロリストに。


いつしか、雷麗に殺されるときがきても、いまの私は簡単には殺されるわけにはいかない。
雷麗と同じくらい、大切な人が出来たから。




「―――ヴェラ、どうかしたのか」
「…いいえ。なんでもないわ。さ、行きましょう。やること、いっぱいあるんだから!」








あの時と同じ、街を見下ろせる丘の上で、私は晴れやかに笑った。


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