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手ブロ企画用ブログです。 小話をのろのろと書いてます。裏話やIF話も含みます。
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露薙の現状。少しは進歩しているのだけど、本当にたった一歩くらいなんだという話。
を、書きたかった。たぶん。

沫淡霧影さん宅 儚さん
中牧さん宅 名取さん
鏡の国さん宅 真綿さん      ちょっとだけですがお借りしました!


 


とくり、とくりと音がする。
胸の上に置いた掌に感じる鼓動はそのままに、ぼんやりと仰向けになったまま天井を見つめる。
早鐘を打っていた鼓動は落ち着いた調子を取り戻して、いまは普段通りに律を刻んでいた。
ゆっくりと視線を転じれば、外はまだ暗く、夜明けは遠いと知れた。
中途半端な時間に起きてしまったとはいえ、今日はもう眠れそうにもない。
先ほどまで見ていた夢を思い返し、背を走り抜ける嫌悪感に体を震わせた。
今更になって、まだ。あの悪夢がいまだに忘れられない。
はふ、とこぼした吐息はだれにも届かない。あのときも、そうだった。誰もいなくて、伸ばした手は空を切って。
――ぞくり、と悪寒がはしる。
ふるふるとかぶりをふって、気を散らす。夜の闇というのは余計なことを思い出させる。
のそり、と身を起こして、ふらふらと障子に近づく。
からりと戸を開けば、予想通り闇が深い。月は落ちかけてこそいるが、まだ夜が明けるにはしばらくかかるだろう。
空に浮かんだ月を見上げて、はふりと一つ息をこぼす。
首元に手をやれば、くっきりと残る傷跡の感触が指先に伝わる。滑らかな他の皮膚とは違い、やや手触りがざらつくそこは、露薙が受けた傷の深さを物語っていた。
傷を受けた時のことを忘れたことは、数年経つ今でさえ鮮明に思い出せる。――いや、忘れようとしても、忘れられないというほうが正しいのだろう。
もとから、自分があまり図太い神経を持ち合わせてはいないということは自覚していた。
それでも、周りの者たちの支えもあったし、難しいことは一人で考える必要はないのだということは、幼少のみぎりより前当主であった母より聞いていた。
だから露薙は基本的に多くの者たちに意見をもとめ、家の総意としていた。
それが、できる環境だった。
それが変わったのは、この首の傷をつくる事の発端となった事件のせいだ。
あの事件以来、露薙は他人を信用できなくなった。
一度、たった一度の裏切り。
それだけのことで、と思うかもしれない。思っている者も、きっといるのだろう。
それは、露薙だって分かっている。そこまで馬鹿でもない。だけれど。
 
「――――…」
 
はく、と一度大きく息を吸う。
あぁ、結局思い出してしまっている。ゆらゆらと、意識が揺れるのがわかる。
もういいや、と思い出すことをやめることをあきらめた。どうせ止めようとしてとめれることでもないのだ、と。
まぶたを閉じてしまえば、あとは意識せずとも甦る。
最初に見えたのは、鈍い銀のひらめき。
次に感じたのは、灼熱感。
のどをせりあがって、吐き出されたのは鮮血。
信じられなくて、目を見開いたのは覚えている。そのとき見えた彼の顔は、恐ろしく歪んでいて。
――ゆがんだ顔のまま、笑っていた。
面白そうに、愉快そうに、楽しそうに、そして心底うれしそうに。
一太刀で深く切り裂かれたのどは、息をすることを忘れてしまって、酸欠で目の前がくらくらした。
それでなくとも大量の血が首を押えた指の間から流れ落ちていくのに。
倒れこんだ露薙を見下ろしていた彼から、声が聞こえたのは偶然だった。
きっと、もう少し彼が声を出すのが早ければショックで聞こえていなかった。
きっと、もう少し彼が声を出すのが遅ければ意識を失って聞くことができなかった。
だから、あれはほんの偶然。
そして、露薙にとっては、災禍。
聞こえてしまった言葉は、そのまま鋭い刃となって露薙の心を切り裂いた。
深く深く傷つけられたそれは、未だに治る気配を見せない。
いまでも見知らぬ影があれば勝手に体が震える。見知っている家族に対しても体が強張る。
争いごとの気配だけでも、もう落ち着いていることなどできなくなる。
もし、側仕えである儚がいなかったら、たとえ表面上の傷がよくなったところで当主を続けることなどできなかったのではないかというくらいには、いまの露薙の状態は業務に支障をきたしている。
他人を信用できないなど、どれほどのものかと思われるかもしれない。誰しも、どこか危うい薄氷の上を歩いているものだ。
だけれど、『裏切り』というそのものが、言葉が、何よりも露薙を傷つける。一度失われた信頼が、全てを否定して疑心暗鬼にかられるのだ。
嘘をついているのではないのか。心の中ではどうおもっているか知れない。そう考えだしたら止まらなかった。怖くて怖くて、また、殺されかけるのはないかと、そう思ってしまって。
いけないとは、わかってはいるのに。そういう者たちだけではないと知っているはずなのに。それでも、どうしようもなく、それは心を抉った。
だから、選んだのだ。自分のそばに置く者を。
だけど、そうやって世界を閉じてしまえば、何も怖いものがなくなる代わりに、何も解決しないと気付いたのは、それこそ本当に最近の話で。
少しづつ治しましょう、と言って、側にいる者たちは無理強いをさせることなく、側にいてくれるから。それでいいかと思ってしまって。それでは駄目なのに、と思ってもどうしようもなくて。
人が寄り付けない当主など、いてたまるものか、と。それくらいであれば、いっそ――。
そこまで考えて、ぐらり、と意識が揺らぐのを感じた。気持ち悪くて仕方がない。ふら、と体が揺れて、そのまま感覚がなくなる。
 
「露薙様っ!!!」
 
ガンッ、、と鼓膜を貫く声がした。それと同時に暖かなものに包まれる。
見知った気配に一瞬強張ったからだから力が抜けるのを感じる。
はかな、と音のない声を出せば、まるで聞こえているかのように、儚は微笑んだ。
 
「すみません、大きな声を出してしまいました。…露薙様、大事ないですか?」
「……」
 
声なく頷けば、ほっとしたように張っていた気が弛むのを感じた。
大丈夫、いまは。
 
(いまは、手が届く)
 
ふらついた体を支えるために回された儚の手に自らの手を重ねて、確かめる。
これは、『家族』の手だ。
この手さえ離れていかなければ、まだ自分は大丈夫だ、と結論付けて。
重ねた手を握り込んで、目を閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あれから、結構な騒ぎになった。
なんせ、奥座敷のほうだとはいえ、叫ぶ声が夜中に響いたのだから。
しかも当主の名を呼んでいたとなれば、すわ何事か、と護衛達が集まるのも致し方ないだろう。
それでも、だ。
 
「………」
 
露薙は自身の眉間にしわが寄るのを感じて、指先でぐりぐりとほぐしてみるが、一向に取れる気がしない。
どうしてくれようか、と考えても、もう日常となりすぎていて正直どうでもいいと感じてしまっている。
目の前に鎮座しているのは、壊れた障子の残骸だ。
 
「ですから、なんでそうなんでも特攻するんですか。いい加減学習してください、お二人ともっ!」
「「すみません」」
 
儚が叱っているのは、参謀を務める名取と護衛を務める真綿の二人だ。
内容から推察できる通りに、この無残にも破壊された障子は二人が壊したものだ。
とはいえ、特段珍しいことでもなく、この二人が物を壊すのはもはや亥家の日常と化しているフシがある。
干支がイノシシだからといって、そこまでなにも習性が似なくてもいいのに。とは、心のうちにしまっておく。
 
(まぁ、でも。)
 
露薙は緩く口元をゆるめて、音なく笑う。
 
(これはこれで、悪くない)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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