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手ブロ企画用ブログです。 小話をのろのろと書いてます。裏話やIF話も含みます。
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幽明社小話2つ。





短編4
 
 
ガゴン、と鉄製の何かがアスファルトに当たり鈍い音を響かせる。
それを音の遠くなった耳で拾いながら、目の前でうずくまる少年を見下ろした。
 
「…まだ、やんのか?」
 
殺気をこめて問えば、うめき声の間から聞こえる否定の応え。
それを聞いて、ようやっと伊周はその少年から離れた。
周りを見渡せば、死屍累々、とまではいかないが、十人程度の少年たちが地に這っていた。
 
「…弱い」
 
呟けば、呆れたような笑い声が路地の先から聞こえてきて、反射的に服の内側へと手を伸ばすと静止の声がかかった。
振り返れば見知った顔の、長い黒髪を無造作にひっくるめた姿の少年がそこにいた。
 
「おまえさんが反則的な強さなだけだろう、チカ」
「…キヨ」
「あーあ、こいつらここいらのシマのやつらじゃん。いいの?」
「こいつらが喧嘩売ってきたんだから自業自得だろ」
 
それに、と伊周はわずかに口元を歪めて笑う。
 
「もう、刃向う気もないだろ」
「おー、こわ。さすが琳中の戦姫」
「姫いうなぶっ殺すぞ」
「あっはは、言われたくないならその童顔とロン毛、どうにかしな」
 
キヨの言葉に舌打ちひとつこぼして、顔にかかる前髪をかきあげた。
小学校高学年からずっと切っていない後ろ髪は腰のあたりまでのびている。それでもからまったりしないのは、もともとの髪質がよいからなのか、それとも母の手入れのおかげか。
切らないのは、何故か母が嫌がるからだ。この年にもなって髪の毛が長いのは、いかがなものかと伊周自身嫌なのだが、如何せん散髪にいくにしてもお金を出すのは親である。
 
「あれ、そういえばチカ」
「あん?」
「怖いって。あれ、スタンガン?壊れたんか」
 
そういってキヨが指さしたのはアスファルトに棄てられたスタンガン。もちろん伊周の持ち物である。
それを目でおって、ああ、と伊周はうなずいた。
 
「さっきな。魔改造しすぎたっぽい。ショートした」
「…お前、工学科にでもいけばぁ?」
「やだよ。ああいうのは趣味でやるから面白いんだよ」
「いつか自分が感電するんじゃね?」
「ねーな。耐電手袋してるし、そんなヘマぁしたら今頃俺生きてねェよ?」
 
にぃ、と口の端を歪めて、半ば自嘲のような笑みを浮かべる。
もとから喧嘩好きだったわけではない。だが、短気が災いしていつの間にか妙なあだ名までつけられるまでに至ってしまったのもまた事実。
そのせいで、いわゆるところの不良に目を付けられるのも日常茶飯事となっている。
ゆえに、護身のすべを少しでもミスしたらよくて重症で病院送り、最悪の事態はいわずもがな、というところである。
とはいえ、何も恨みだけをかっているわけでもなく、中には純粋に力勝負を挑んでくる馬鹿もいたりする。
例えば今現在地に転がってるやつらがそうである。いくら負けても恐怖を味わっても次の日にはケロッとしている当たり、慣れてきたのか頑丈なのか、いささか判断に迷うところだ、と伊周はため息をついた。
 
「さて、ま。お前らまじいい加減にしとけよー。チカきれさせたらまじ逝くぜぇ?」
「キヨ!」
「あっはは、ほらチカ行こうぜ。腹減った」
「……マイペースすぎんだよ、てめぇは」
 
呆れたようにため息をはき、それでも否定はしない。どうせキヨには何を言っても無駄だとしっているから。
先を歩き出したキヨに呼び声に、路地から外へと足を踏み出した。
 
 
 
 
 
 
 
○短編5
 
 
眼を閉じて、開いて、また閉じる。
何度繰り返したところで、視界の中に色がさすことはない。
 
「ふぅむ…。獄くん、まだ、みえないかい?」
「えぇ、まぁ。以前と違って、光の加減はわかりますが、それ以上は」
 
ひらひらと、空気が動いてる感じからして目の前で手が振られているだろうということくらいはわかるが、それだけだ。
目に見えているわけではない。
そう返すと、かかりつけの眼科医である医師がふぅ、と一つため息をこぼした。
幼いときから診てくれている彼は、どうして目が見えなくなったのかを知っている数少ない大人の一人でもあるがゆえに、とても親身になって治療に関わってくれていた。
それでも、この目に光が戻ることはなかったのだけれど。
 
「…治るもの、なんだけどね。普通は。おかしいなぁ」
「先生、それ、患者の前で言うことじゃないと思いますが」
「隠してもどうせきみにはわかっちゃうからいいでしょ。…診断、間違えたかなぁ」
「少なくともきっかけではあったんだと思いますけどね」
 
困ったように眉を下げる医師に、獄は苦笑を返す。
別に目が見えなくなったのは彼のせいではないし、彼のせいにするつもりもない。
決して世界の色を映さぬ瞳は、むしろ獄にとっては心地よいものであるがゆえに、治療に身が入らないのもまた事実だった。
 
「うーん…。とりあえず検査結果がでたらまたおいで。連絡するから」
「わかりました。ありがとうございます」
「なんの。むしろきみに私は嫌われてもいいくらいなんだけどね」
「はは、冗談きついですよ」
 
からり、と診察室のドアをあけたところで呟かれた言葉に、獄はケラケラと笑って否定の言葉を返す。
救われた、という恩を感じている相手を、どうして嫌うことができようか。
 
「それでは、また」
「うん、またね獄君」
 
お大事に。その言葉を背に白く清潔な空間から日常の世界へと戻る。
雨の香りがする。体をなでる風はひんやりとしていて、おそらく空は曇り空であろうことがうかがえる。
目が見えずとも、いくらでも世界をこの身に感じることはできる。むしろ見えないからこそ全身で感じようとする。
これはこれで悪くない、と。そう獄は考えていた。
 
「…さて、帰るとするか」
 
雨が降り出す前に帰らなければ、道がわからなくなってしまう。
ぐ、っと背を一度伸ばして、獄は足早にコンクリートの道を蹴りだした。










今回は
 短編4:伊周、中学生の頃。 +モブ
 短編5:獄、病院へいく。+モブ
                          なテイストです。
まぁつまりモブとの絡みなわけですが。
ちかちゃんのあだ名は笑うところです。ええ、おもいっきり笑うところですw
考えた私が笑ってたけども!
ちかちゃんの境界での性格はつまるところ、ちかちゃんの「凶暴性」が前面にでている性格でもあります。
とはいえもともとは人にやさしい性格でもあるので、敵でない限り、口ではなんやかんやといいつつ優しくしてくれたりなんだり。面倒な性格ですことw
獄は…とくにいうこともなく(笑) まぁ、獄はある意味で憶病なのかな、と。しっかりしてるし、弱さはほとんどといっていいほどみせないけど、心のなかでは静かに傷ついてたり、悲しんでいたりするタイプ。
図太いようで繊細、そんな感じでイメージしてたりする。うむ。でもしっかりものではあるからなんというか、歪みはしない、というか。
ちかちゃんとちがって病む要素がないというか?ww
動かしていくうちにすこしづつ変わっていくからなぁ…うぅむ。成長してるって感じ、かな!

お粗末様でしたー!


 
 
 

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