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手ブロ企画用ブログです。 小話をのろのろと書いてます。裏話やIF話も含みます。
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幽明社で短編3つです。

お借りしたお子さんなどについては一番したに明記しております。






○短編1
 
扉に足を踏み入れるのと同時に、姿が捻じ曲がるここ数年で慣れ親しんだ感触に目を細める。
抜け出た先は、視界の閉ざされたくらい森の中だった。
 
「…今回はまた…面倒なところに出たな」
 
ぐるり、と一通り周りを見渡して、伊周は手にしていた何かを地面へ落して、ガッ、と踏みつけた。
 
「〈発動(スタート)〉、此処を拠点と定める。〈固定(セット)〉」
 
紡がれる言葉と同時に一瞬だけ足元がひかり、そしてまた森は闇へと戻る。
伊周の使う術の一つ『言霊』。
通常使われる言霊を伊周なりにアレンジしているため、正規の言霊使いからすればきっと奇妙に映るであろうその術は、戦闘と補助に特化したものだ。
伊周自身が定めた言葉の列に沿い、発動を短縮化したものであり、固定化されているがゆえに単純でわかりやすい。
言霊はイメージだ。どれだけ具体的に『現象』を『創造』できるかが、言霊使いの能力を決める。
伊周の能力は言霊をさらに変化させたものであるがゆえに一概にはいえないが、こと補助の視点からみると最高クラスのものであると自負していた。
言霊を用いて帰り道の導を打ち込んだ伊周は、森の道なき道をあてどもなく歩き出した。
 
「暗い。陰鬱。やる気が出ない。あーあ、これで連れ合いでもいればマシだったろうに」
 
ぶつくさと文句を言いながらもその歩みを止めることはしない。
そもそも一人で来たのには意味がある。文句を言いながらも誰かいないか、などと探したりしないのはそのためだ。
 
「―――いた」
 
がさり、と森の開けた場所に出た瞬間、伊周はその歩みを止め、クツと喉の奥を震わせた。
当たりに満ちるのは濃厚で粘りつくような、陰湿な気配。害意しかないそれを平然とした顔で受け流して、言霊を舌に乗せる。
 
「<発動(スタート)>、全身体能力の〈強化>、及び〈炎(フレア)〉の〈概念〉の〈固定(セット)〉――〈再生(リスタート)〉」
 
陽炎のように揺らめく炎がその身を包むのと同時に、黒い影が伊周の身にとびかかる。
 
「…とりあえず、」
 
 
 
逝っとけよ。
 
くすり、と笑った顔は、どこまでも楽しそうだった。
 
 
 





 
 
○短編2
 
みえない、ということに恐怖を抱いたことはない。
生まれつき見えなかったわけではなく、ある日唐突に視力を失ったというのに、私はその時でさえ怖くはなかったのだ。
ただ、その時に感じた感情に名を付けるのだとしたら。
 
 
きっと、それは、――安堵、だったのだ。
 
 
 
 
「――…ひとや?」
 
ひたり、とほのかに温かい手の平を目の上に当てられる感触に、緩やかな笑みがこぼれるのがわかった。
まったく、自分がここまで現金にできているのはついぞ知らなかった。起き抜け特有のぼんやりとした頭のなかでそう苦笑する。
恋人の膝に頭を預けてうららかな木洩れ日に少しばかり眠りに落ちていたようだ。
とはいえ、目に見えていないため木漏れ日がどうの、だとか天気がいいから、といったことは全て翼が口にしたことだ。
天気がいいから、外でお昼にしないか、と誘ってきた翼にさほど迷いもせずに肯定の意を返したのは十数分前。
もとより食べるのが早いため、自分のぶんの弁当を食べ終わってから、反論に耳を貸すことなく恋人の膝に頭を預けたのがおそらく数分前。
目を覆うようにあてられている手の平のぬくもりはそのままに、翼が何かを言いよどんでいる気配を感じてどうかしたのかと声をかけると、わずかばかり言いよどんだ後に囁くような言葉が落とされた。
 
「獄。大丈夫か…?」
「…? 大丈夫、とは?」
「いま、一瞬顔がこわばったから…なんかあったのかと」
 
こぼされた言葉は、言外に心配だ、という色を濃くにじませていて。
目元に当てられた手の平に己の手を重ねてくつり、と喉奥で笑う。
幸せだ、と思う。それこそ、心の奥から。
 
「…つばさ」
「ん?」
「私は、いまが、すごくしあわせなんだ」
「…あぁ」
「だから」
 
だから、大丈夫。心配しなくて、大丈夫。
いまはまだきみに話せないけれど、いつかはきっと、話せるようになるから。
心の傷も、過去の過ちも、全てとは言えないかもしれないけれど。
それでも、いつかは、きっと。
 
「…そっか」
 
優しげな声が聞こえて、目元を覆っていたぬくもりが離れる。
そのままそっと髪の毛を梳くようにして動かされる手の動きに、再び眠気を誘われる。
その衝動に抗わずに景色をうつさない瞳を閉じて、完全な闇へと沈む。
 
「おやすみ、ひとや」
 
くすり、と笑う気配は優しいぬくもりにあふれていた。
 
 


 




 
 
○短編3
 
背中に感じる熱と、身体に回された腕の力強さに、どうしてこうなったんだっけ…と若干の現実逃避をしながら、伊周はため息をついた。
 
「…なー、かじき?」
「なにー、伊周くん」
「いつまで抱きしめられてなきゃいけないのかな、俺は」
「オレが飽きるまでかな」
 
ぎゅう、と腕にさらに力が入り、密着度が高まる。
もう正直抵抗する気力もなにもかもが存在しないため、かじきが余計な事さえしなければ好きにさせるつもりだが、これは少々暑苦しい。
どうしてだなんて野暮なこと。単に風呂上がりに絡まれたというだけの話で、抱きしめてきた理由なんてかじきにしかわからない。
同じ部屋にいる理由は聞かないでくれ、としかいいようがない。――恋人だから、ということでお茶を濁しておく。
背後にいるかじきに寄りかかるようにして力を抜けば、身体を支えるように腕の位置が変えられる。
普段はからかって来たりいじわるしてきたりと鬼畜でドSで変態な恋人であるが、ところどころにさりげない優しさが隠れているのが、この上なくこそばゆい気持ちにさせられる。
本当に抱きしめられているだけなのが逆に気になって、そっと上目づかいでかじきを見上げれば、どうかしたの、と柔らかい声で問われた。
 
「…別に。いつになく大人しいから、変なものでも食べたのかと思っただけ」
「ひどいなぁ、伊周くん。オレだってたまにはゆっくりしたいんだよー?」
「酷いとかいうならまず普段の自分の行動振り返ってみろ。…でもまぁ、悪くはないかな」
 
あったかいし、と言ってゆるく微笑めば、わずかにかじきの体が強張るのが背中越しに伝わってきて、なんだろう、と思って首をかしげると深い深いため息をつかれた。
 
「無自覚って…怖いよねー…」
「?」
「なんでもないよー」
 
いつもどおりに笑っているかじきは、理由を説明する気は一切なさそうで。
仕方ないか、と先ほどのことは頭の隅に追いやって目を閉じる。
本当のことを言えば、抱きしめられるのもキスされるのも嫌ではないのだけど。それでも素直にそれを受け取ることができないのは、きっと男としてのわずかばかりの矜持ゆえで。
恋人からの愛情を素直に受け取れないのは、きっと自分が欲しがりだからだ。誰にでも優しい恋人の何より大切な気持ちを形にしてほしいから、素直に慣れないままなのだ、と。
 
(あぁ、俺って結構わがままなんだぁ…)
 
ゆるゆると体を浸食する腕の温かさに、頭が睡魔に引きずられていくのがわかる。
あえてそれに逆らうことをせずに体の力を抜いて、完全に後ろの恋人に身体を預けてぼんやりとした頭のまま言葉を舌に乗せる。
 
「かじき」
「んー、なにー?」
「…だいすき」
 
再びかじきの体が硬直したのを感じながらふぅわりとした眠りの海に沈んでいく。
これはあとが恐いなぁ、とおもいながらもこういうときでないと素直に口に出せない想いだから仕方ないか、と考えることを放置した。
 
 






あとがき
短編2にて 漣 海月さん宅 和泉 翼くん
短編3にて el-toさん宅 野村 かじきくん   お借りしました!

短いお話ですが…!
お子さん勝手にお借りしてしまったので駄目でしたら一言くださいませー!><;;
すぐに下げさせていただきます…!

 

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本職は一応字書きです。
絵は嗜みというか趣味というか。
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